ふたりが老いても | 使いみちのない風景

ふたりが老いても

「君に読む物語」

アメリカ南部のある療養施設に、
初老の女性がひとり暮らしている。
彼女は痴呆により、過去の想い出を全て
なくしてしまっている。

そんな彼女のもとに、
デュークと名乗る男が
物語を読み聞かせに来るようになる。
昔アメリカ南部の小さな町で、
ある夏に出会った若い男性と女性の恋の物語だ。


そして物語はその2人が出逢った過去へと遡る。
ノアは町の材木置き場で働く、いわば下級層。
アリーはひと夏の休暇を過ごすためその町を訪れた、良家の子女。
ともすればどこにでもありそうな、
身分という壁に隔てられた恋の話だけれど
何年もの歳月を凝縮し、その中の局面が切り取られ描かれているからか
既視感はなく、新鮮な感覚でその展開を見守れる。
そしてそれを聴く初老の女性と、デュークとの物語。
2つがリンクしていく。

古き良きアメリカ南部の匂いだとか、
方や移ろい、方やもがきながらも貫かれる気持ち。
父と息子、母と娘、
年老いた夫婦の際限のない愛
(自分が老いても夫をあんなふうに愛せるだろうか?)
そこに隠れる苦悶、
水面も空も見渡す限り赤く染まった、雄大な湖畔から望む夕日の情景。
(これを見られただけでも劇場に行った価値があった)

善も哀も純も、きれいなものがちゃんときれいに描かれていて、
素直に涙させられる。