その場所では今も同じ時を刻んでいる | 使いみちのない風景

その場所では今も同じ時を刻んでいる

インドのヴァラナシに強く惹かれます。

私はヒンドゥー教徒ではないですが、
必ず行きたいと思っています。


何年か前に遠藤周作の「深い河」を読んだとき、
自分が今こうして過ごしている間にも
その場所では同じ時を刻んでいるんだと
そこで生きて暮らしている人びとを、
まるでふる里の親や友人をふと想うように
でもそれ以上の強い感情で想いました。

どんな場所について書かれた本を読んだときにも
こんな風に感じたことはなかったので、
それ以来時々ヴァラナシについて考えては
そこにある、ありとあらゆるものを見て触れたいという衝動に拍車がかかります。


「信じられるのは、それぞれの人が、それぞれの辛さを背負って、深い河で祈っているこの光景です」
と、美津子の心の口調はいつの間にか祈りの調子に変わっている。
「その人たちを包んで、河が流れていることです。人間の河。人間の深い河の悲しみ。その中にわたくしもまじっています」
                   
                  遠藤周作 『深い河』 より 


さまざまな境遇でここに来てしまった人たちの
それぞれの視点で書かれています。

私は何故か
「この世のどこかに必ず生まれ変わるから 探して、私を」
という言葉を残して死んだ、妻の生まれ変わりと思われる少女を探す
「磯部」という男の視点に重なって読んでいました。

私自身は輪廻転生を信じてはいないのですが、
こんなにも惹かれるのは
前世があるなら、インドに関係していたのかもしれません。



今日の一枚

「Aria on the G string」/Manhattan Jazz Quintet

デヴィッド・マシューズ率いる壮大なジャズグループが
バッハをアレンジ。
アリアはまじでいいです。